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RTX 5060 Ti の電力制限 150W のデメリットは 3% 未満 — 消費電力の実測と 2 枚刺しの電源容量

3% 未満遅くなった分180W → 150W
155〜168W180W のままの実際の電力全部 GPU に載るモデルと画像生成
約470W2 枚刺し・150W ずつCPU 込み。650W の電源で足りる
CONTENTS目次(10)
  1. 測った環境
  2. 電力の上限の変え方
  3. 測り方
  4. 結果: 遅くなったのは 3% 未満
  5. なぜ差が小さいのか
  6. 2 枚刺しの電源容量
  7. 補足: 何もしていないときの消費電力
  8. 測っていないこと
  9. まとめ
  10. 出典

この記事の結論

  • RTX 5060 Ti 16GB の電力の上限を 180W から 150W に下げても、遅くなったのは 3% 未満でした。ローカル LLM(大規模言語モデル)の文章の生成は 0.4〜1.2%、プロンプトの読み込みは 2.6%、画像生成は 0.5% の差です。
  • 180W のままでも、実際に使っていた電力は 155〜168Wでした(全部が GPU に載るモデルと画像生成)。一部を CPU に置く MoE(一部の重みだけを使う作り)のモデルは 100W 前後で、そもそも上限に届きません。
  • 2 枚刺しにしても、2 枚とも 150W に絞れば、CPU 込みで約 470Wです。650W の電源のままで足り、850W に替えて得られる速さは 3% 未満にとどまります。

RTX 5060 Ti 16GB を 2 枚にしてローカル LLM を動かす構成は、VRAM(GPU のメモリ)を 32GB にできるので、手元で大きめのモデルを動かす人の間でよく話題になります。そのとき必ず出てくるのが電源の容量で、「2 枚とも電力制限をかければ今の電源で足りるが、そのぶん遅くなる」という話です。では、どれだけ遅くなるのか。これを 1 枚の状態で測りました。

結果は、遅くなったのは 3% 未満でした。数字は 2026年9月29日時点のもので、測った環境は次のとおりです。

測った環境

項目内容
GPUGeForce RTX 5060 Ti 16GB(電力の上限: 既定 180W・下限 150W・上限 198W。nvidia-smi -q -d POWER の表示)
CPU・メモリCore i5-12400F・DDR4-3200 32GB
電源650W(80 PLUS Bronze)
OS・ドライバWindows 11・NVIDIA ドライバ 610.47
ソフトOllama 0.34.3(ローカル LLM の実行環境)・ComfyUI 0.37(画像生成)

電力の上限の変え方

電力の上限は、NVIDIA のドライバに付いている nvidia-smi で変えられます。管理者として開いたターミナル(PowerShell)で次のように打ちます。

# 今の上限と、変えられる範囲を見る
nvidia-smi -q -d POWER

# 上限を 150W にする(管理者権限が必要)
nvidia-smi -pl 150

# 既定の 180W に戻す
nvidia-smi -pl 180

RTX 5060 Ti は 150W より下には下げられませんでした(下限 150W)。また、この設定は Windows を再起動すると既定の値に戻ります。2 枚刺しで常に絞っておくなら、起動時に nvidia-smi -pl 150 を実行するタスクを登録しておく必要があります。

測り方

同じ 3 種類の仕事を、180W → 150W → 180W の順に続けて測りました。最後にもう一度 180W で測るのは、測っている間に GPU が温まるなどして速さが変わっていないかを確かめるためです。2 回の 180W はほぼ同じ値だったので、差は電力の上限によるものと読めます。

  • 全部が GPU に載る 27B のモデル(Qwen3.8-27B・3bit の量子化・約 13GB): 入力 約 2,000 トークンで 2 回、約 16,000 トークンで 1 回。どれも 512 トークンを書かせ、生成と読み込みの速さを見ました
  • 一部を CPU に置く MoE のモデル(Qwen3-Coder の 30B-A3B 系・約 13GB): 入力 約 2,000 トークンで 2 回。MoE(Mixture of Experts)は、トークンごとに一部の「専門家」の層だけを使う作りで、計算の量が少ない代わりに重みの置き場所が問題になります
  • 画像生成(Qwen-Image 2.1・1024×1024・25 ステップ): 1 枚ずつ。モデルの読み込みを含めた時間です

あわせて、1 秒ごとに nvidia-smi で消費電力と GPU のクロックを記録し、仕事をしている間の中央値を取りました。

結果: 遅くなったのは 3% 未満

仕事180W150W差180W での消費電力
27B の生成(入力 約 2,000 トークン)27.57 tok/s27.39 tok/s-0.7%155〜161W
27B の生成(入力 約 16,000 トークン)25.69 tok/s25.37 tok/s-1.2%163〜165W
27B の読み込み(入力 約 16,000 トークン)871 tok/s849 tok/s-2.6%166〜168W
MoE の生成(入力 約 2,000 トークン)79.9 tok/s79.6 tok/s-0.4%100〜101W
画像生成(1024×1024・25 ステップ)20.4 秒20.5 秒+0.5%160〜161W

tok/s は 1 秒あたりに処理したトークンの数。180W の列は、150W の前後に 1 回ずつ行った 180W の測定の平均。MoE の -0.4% は、同じ条件で繰り返したときのばらつき(1% 前後)より小さい差です。2026年9月29日時点。

150W にすると、27B の生成中の GPU のクロックは 2,662〜2,677MHz から 2,580〜2,617MHz へ、2〜3% 下がりました。速さの差はどれもこのクロックの下がり分より小さく、生成はとくに小さい差でした。

なぜ差が小さいのか

ローカル LLM が文章を生成するときは、1 トークンを出すたびにモデルの重みを VRAM から全部読み出します。このとき速さを決めているのは、計算の速さではなくメモリから読み出す速さ(帯域)です。電力の上限を下げると GPU のクロックは少し下がりますが、メモリの帯域はほとんど変わらないので、生成の速さはあまり落ちません。

一方、プロンプトの読み込みは、計算そのものの量が多い仕事です。こちらはクロックの下がり分(読み込み中は 2.8%)に近い 2.6% の差が出ました。画像生成も計算の多い仕事ですが、測った時間にモデルの読み込みなども含まれるため、差は 0.5% にとどまりました。

MoE のモデルは、仕事中も 100W 前後しか使っていませんでした。1 トークンごとに使う重みが全体の一部だけで GPU の仕事が軽いうえに、この設定では重みの 4% を CPU 側のメモリに置いていて、GPU が待つ時間が長いとみられます。もともと上限の 180W に届いていないので、上限を下げても、使っていない電力が削られるだけでした。

「上限に張り付いている」と「絞ると遅くなる」は別の話

この測定の前には、5 分ごとの消費電力の記録を見て、全部が GPU に載るモデルと動画生成は中央値で 163〜180W、つまり上限の近くに張り付いていると分かっていました。そこから「150W に絞ればそのぶん遅くなるので、2 枚刺しなら電源を 850W に替えたほうがよい」と見積もっていました。

実際に測ると、差は 3% 未満でした。上限に張り付いていても、削られるのはクロックの数 % で、生成の速さを決めているメモリの帯域には届きません。消費電力の記録だけから速さを見積もるのは誤りのもとでした。

2 枚刺しの電源容量

2 枚刺しにしたときの消費電力を、2 通りで見積もります。CPU は Core i5-12400F の最大値(117W)、そのほかはマザーボード・メモリ・SSD・ファンで約 50W とします。

GPU の上限見積もり合計
2 枚とも 150W150W × 2 + CPU 117W + その他 約 50W約 470W
2 枚とも 180W180W × 2 + CPU 117W + その他 約 50W約 530W

650W の電源なら、150W に絞った構成は約 180W の余裕が残ります。180W のまま使う構成も合計では収まりますが、GPU は一瞬だけ上限を超える電力を引くことがあり、その跳ねを考えると 650W(80 PLUS Bronze)では余裕が小さくなります。

2 枚とも 150W に絞って 650W の電源のまま使うのが、今回の測定からは妥当な線です。850W の電源に替えて 180W で回しても、得られる速さは 3% 未満です。ただし、電源を替える価値が無いと言い切れるのは、ここで測った種類の仕事についてだけです。

補足: 何もしていないときの消費電力

モデルを何も読み込んでいないとき、nvidia-smi が示した RTX 5060 Ti の消費電力は約 4W でした(2026年9月29日、画面を表示したままの状態)。27B のモデルを VRAM に読み込んだまま、使用率 0% で待っているときは約 13W(12.8W)でした。

測っていないこと

  • 数分〜十数分かかる動画生成は測っていません。画像生成と同じく計算の量が多い仕事なので、2〜3% 遅くなる程度とみていますが、長く回したときの温度の影響までは確かめていません
  • 測ったのは 1 枚の GPU です。2 枚を同時に全開で回したときの、電源の電圧の落ち込みや温度は見ていません
  • GPU には個体差があります。同じ型番でも、上限を下げたときのクロックの落ち方は少しずつ違います

まとめ

  • RTX 5060 Ti の電力の上限を 150W に下げても、ローカル LLM と画像生成は 3% 未満しか遅くならない(2026年9月29日時点)
  • 文章の生成はメモリの帯域で速さが決まるので、クロックが下がってもほとんど変わらない。差が最も大きかったのはプロンプトの読み込み(2.6%)で、それでも 3% 未満
  • 2 枚刺しは、2 枚とも 150W に絞れば 650W の電源で足りる(約 470W)
  • 消費電力が上限に張り付いていることは、絞ると遅くなることの証拠にはならない。見積もる前に、1 枚で測るほうが確か

出典

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この記事は、手元の機材で行った測定をもとにした一般的な技術情報の提供を目的としており、特定の製品・ソフトウェアの購入や利用を推奨・勧誘するものではありません。数値は 2026年9月29日時点の測定で、機材やソフトの版によって変わることがあります。電力の上限の変更や電源の選定は、ご自身の責任で行ってください。